夏が近づくと、「夏期講習を取るべきか」「取るならどの講座を取るべきか」という相談を、塾生の保護者様から毎年たくさんいただきます。
結論から言うと、ほとんどの受験生に夏期講習は不要です。
この記事では、松濤舎が夏期講習をおすすめしない理由と、講習に行かない場合に夏休みをどう設計すべきかを解説します。
結論:ほとんどの受験生に夏期講習は不要
夏期講習の大半は講義形式、つまりインプットです。しかし、夏休みに受験生がやるべきことはその逆で、アウトプット(演習)です。
なぜなら、夏休みの本当の役割は「演習不足の解消」だからです。
高1なら入学から夏までの3〜4ヶ月、高2なら約1年半、高3・浪人生ならさらに長い期間の中で、「習ったけれど解けるようになっていない問題」が誰にでも溜まっています。松濤舎ではこれを「借金」と呼んでいます。定期テスト対策で十分に習得しきれなかった範囲、×マークがついたまま放置されている問題集の問題——これらを精算できるまとまった時間は、夏休みにしかありません。
詳しくは【決定版】夏休みの学習計画の立て方で解説していますが、夏にやるべきは「新しい講義を聞くこと」ではなく「解けない問題をしらみつぶしに潰すこと」なのです。
夏期講習をおすすめしない3つの理由
理由1:講義を受けると演習時間が減る
当たり前のことですが、講義を受けている時間は問題を解いていません。夏期講習に通うと、移動時間・講義時間・その予習復習で、本来確保できたはずの演習時間が大きく削られます。
成績を決めるのは「問題集の習得レベル」です。1日の演習時間が講習で圧迫されれば、触れるべき問題数に触れられないまま夏が終わります。
理由2:「受けた」という安心感で終わり、解けるようにはならない
松濤舎には、高3や浪人の9月以降に、大手予備校から移ってくる生徒が毎年います(合格体験記の冒頭に入塾時期を記載しているので、ご確認いただけます)。夏まで予備校に通っていたわけですから、当然、夏期講習も一通り受けています。
こうした生徒たちに共通するのは、頭の中に知識は入っているのに、それが「取り出せる状態」になっていないことです。受け身で講義を聞くだけではアウトプットの練習ができず、問題を前にしたときに保持している知識を引き出せません。
実際、こうした生徒たちが松濤舎に入塾し、講義ではなく演習量・演習時間をしっかり確保して「解くべき問題」を解く時間に切り替えた結果、急激に成績が伸びたケースは多数あります。記憶や知識を適切に引き出す練習——専門的には想起学習と呼ばれる学習——こそが、成績を伸ばす本体だからです。
理由3:夏期講習の時点では、志望校がまだ固まっていない
「大学別対策講座」のような講習に価値があるとすれば、それは出願校が固まってからの話です。夏の時点では、志望校はその後の成績次第で変わります。志望校が固まっていない段階で特定大学向けの講義を受けても、投資が無駄になる可能性が高いのです。
例外はあるか?
「夏期講習が有効な例外的なケース」は、基本的に存在しないというのが松濤舎の考えです。
強いて言えば、冬期講習には例外的な価値があり得ます。冬は出願校が明確になっている時期なので、受験する大学の出題傾向・時間配分・解く順番といった、その大学固有の情報が手に入る講座には意味があるからです。ただし、こうした情報も現在は動画やネット上に多く公開されており、講習でしか得られないものは年々減っています。
いずれにせよ、夏期の段階で取るべき講習はありません。
保護者様からよくいただく2つの相談
「数学や理科のハイレベル講座を取っておくべきでは?」
取る必要はありません。夏は難しいことをやる時期ではなく、基礎固めと、まだ解けていない問題のしらみつぶしの時期です。手持ちの問題集の中に×マークの問題が残っているうちは、ハイレベル講座に手を出しても積み上がりません。
「国語・社会・情報が手薄なので、講習で埋めるべきでは?」
これも講義で埋めるべきではありません。これらの科目でまず必要なのは暗記です。古文単語・古文文法・漢文の句形や重要漢字などは、講義で教わるものではなく、自学自習で覚えるものです。
そもそも共通テストでしか使わない科目は、総合点に占める割合が小さい科目です。夏以降に月1回ペースで共通テスト模試を受けて形式に慣れ、それでも演習量が足りなければ11月以降に過去問や予想問題集で補えば十分間に合います(本番まで2ヶ月半あります)。夏の貴重な時間は、二次試験でも使う英語・数学・理科に使うのが最適です。
夏に共通テスト対策を前倒しする必要がない理由は、記述模試の偏差値と共通テストの得点に強い相関があるためです。詳しくは【決定版】模試の効果的な受け方で解説しています。
実例:夏の共テ模試6割からでも国公立医学部に合格する
「講習に行かないと間に合わないのでは」という不安に対して、実例を挙げます。
松濤舎では、夏の共通テスト模試が6割程度から国公立医学部に合格した塾生が複数います。
- 夏の共テ模試59%→弘前大学医学部合格
- 夏の共テ模試64%→富山大学医学部合格
- 夏の共テ模試67%→新潟大学医学部合格
夏の時点の点数は、演習不足・形式への未アジャストの影響が大きく、実力の上限を示すものではありません。夏に演習量を確保して記述模試の偏差値を上げ、秋以降に共通テスト形式へアジャストすれば、最終的に8割近くまで到達します。焦って講習に飛びつく必要はないのです。
講習に行かない場合の「演習の夏」の設計図
では、講習に行かずに何をすべきか。手順は次の通りです。
- 解けない問題を洗い出す:普段から問題集に○×マークをつけて管理し、×マークの問題(=解けない問題)と、○がついてから時間が経った問題をリストアップします。問題番号を書き出したチェックシートを作るのがおすすめです。
- 次の模試の出題範囲を優先する:8月末の全統記述模試の出題範囲から潰していきます。
- しらみつぶしに潰す:チェックシートの問題を夏休み中に全て潰します。学年別の勉強時間の目安や1日のスケジュール例は【決定版】夏休みの学習計画の立て方を参照してください。
松濤舎のサマースクールについて
「演習中心の夏にすべきなのはわかったが、自分で計画を立てて回しきる自信がない」という方向けに、松濤舎ではサマースクールを開講しています。
- 期間は約1ヶ月。松濤舎が普段行っている演習中心の学習を、1ヶ月間だけ切り出して体験できます
- 一人ひとりに1ヶ月間の学習プランを作成し、演習不足のテーマの穴埋めを短期集中で行います
- 料金は高1〜高3:66,000円、浪人生:88,000円(いずれも税込)。入塾金はかかりません
講義を受ける夏ではなく、解けない問題を潰しきる夏にしたい方は、ぜひご検討ください。詳しくはサマースクールのご案内をご覧ください。
「夏期講習は必要か?」に関するQ&A
- 夏期講習に行かないと周りに差をつけられませんか?
- 差がつくのは講義を聞いた量ではなく、問題集の習得レベルです。講習に使う時間を演習に充てた方が、むしろ差をつける側に回れます。
- 夏期講習が有効な人はいますか?
- 基本的にいません。講習に価値があるとすれば、出願校が固まった後の冬期の大学別対策ですが、それも動画やネットで代替可能になりつつあります。
- 塾に通わず独学で夏を乗り切れますか?
- 可能です。ただし夏休みの計画は崩れやすいものなので、○×マークとチェックシートによる管理、1問あたりにかける時間を明記した計画作りをおすすめします。
- 共通テスト対策の講座は取るべきですか?
- 不要です。共通テストの点数は記述模試の偏差値と強い相関があり、夏にやるべきは記述力を上げる演習です。形式へのアジャストは秋以降で十分間に合います。
- 高1・高2も夏期講習は不要ですか?
- 不要です。高1・高2こそ英語と数学の問題集の習得レベルを上げることが最優先で、講義よりも演習に時間を使うべき時期です。
